●セットリスト
1. 変拍子
2. Find the answer
3. vampire's store
4. 生きているよりマシさ
5. 来週のヒーロー
6. Sonic Disorder
7. タクシードライバー・ブラインドネス
8. パープルムカデ
9. I・N・M
10. 正常
11. 落堕
12. coup d’Etat~空をなくす
13. Drawn the light
14. 翌日
(アンコール)
EN1. 無効の日
EN2. 生活
EN3. 神のカルマ
EN4. Share the light
EN5. 天才
EN6. 真空
(ダブルアンコール)
WEN1. リアル
WEN2. Reborn
インディーズのファーストアルバム『COPY』のリリースから16周年を記念して、16年前に『COPY』が発売になった日、10月5日のZepp Tokyoを皮切りに行われた全16本のツアー「十六夜<IZAYOI>」のファイナル、3月20日新木場スタジオコースト。
当初は前半の7本の日程が発表され、ツアーが始まった10月5日に後半の9本の日程と、11月8日にニューアルバム『delaidback』をリリースすることがアナウンスされた。
さらに。後半日程が始まる段階で、3月20日新木場スタジオコーストに「冥途」というサブタイトルを追加したことと、2014年の再始動以降、毎年ツアーとリリースを行って来たが、この日が終わったら「休止とかおおげさなものではないですが、このへんで一休みします」ということが、発表になった。
ツアー前半は、『COPY』の曲を中心にセットリストが組まれた。ツアー後半は、『delaidback』と『delayed』、『delayedead』の『delayed』シリーズ三部作と、『COPY』から選曲したセットリストだった。
そして、この最終日は、本編14曲・アンコール6曲・ダブル・アンコール2曲で計22曲のうち、『delaidback』から1曲(“変拍子”)、『COPY』から3曲(“Drawn th light”、“無効の日”、“生活”)、それ以外の18曲は全キャリアからピックアップした選曲だった。
なお、このライブは、ニコ生でリアルタイム中継された。
僕はこのツアー、前半日程は初日の10月5日Zepp Tokyo、後半日程は11本目の2月20日リキッドルームと、この最終日の3月20日のスタジオコーストを観た。
Zepp Tokyoは、初日だったので当然と言えば当然だが、ヒリヒリとした緊迫感に満ちたライブだったと感じた。2月20日は、後半日程が始まってから4本目だったことと、「このへんで一休み」を発表したあとだったせいか、五十嵐もMCで軽口を叩いたりして、やや落ち着いた、リラックスした空気と、演奏そのものの熱さのコントラストが印象的なステージだったように思った。
で、最終日。ステージ前に下りた紗幕に『delaidback』のジャケットが映し出され、その後ろで3人が同アルバムの“変拍子”を演奏し始める、という形でライブは始まった。2曲目“Find the answer”で紗幕が開き「冥途」の二文字がステージ後方に現れ、オーディエンスから歓声と拍手が挙がる。3曲目“vampire’s store”終わりでドラムの中畑大樹が、「今日はお足元悪い中、ありがとうございます……MCやってるとね、こういうことも言えるようになるよね」と挨拶。
4曲目“生きているよりマシさ”で何度か五十嵐隆(Vo・G)のノドが危うくなり、フロアが心配な空気に包まれた、と思ったら、曲が終わるや否や五十嵐、「想定内! 3曲保った、3曲!」と叫び、フロアの緊張が解け、笑いが広がる。それ以降の曲でも何度か、五十嵐のノドが危うい瞬間はあったが、フロアから飛んだ「がんばれ!」という声に五十嵐が「はいよっ!」と軽く答えたりして、ダウンな空気にはならなかった。
9曲目では久々に(解散前の)後期シロップの大名曲“I・N・M”を披露。10曲目“正常”の後半で中畑、ドラムソロ。11曲目~13曲目、“落堕”、“coup d'Etat”~“空をなくす”、“Drawn the light”のゾーンでは、この日もっとも激しくフロアがうねる。
本編ラストは、インディリリースされたsyrup16g最初の作品『Free Throw』の1曲目、“翌日”だった。つまり本編は、最新作の曲で始まって、最初の作品の曲で終わったことになる。
アンコールは、3人のアンサンブルがめったやたらとばしっと合った“無効の日”、そして“生活”と、『COPY』の曲2連発でスタート。“神のカルマ”、“Share the light”、“天才”と、(このバンドの中では)ラウドでアッパーな曲を3連打してアンコールが終わるはずが、その場で急遽“真空”も追加する。
2度目のアンコールの1曲目は“リアル”。そして、フロアから飛んだ「ツアーおつかれー!」という声に「ありがとうございます」と答えた五十嵐は、「またいつか戻って来ます。みんな来てください。おやすみなさい」と言ってから、2008年3月1日、日本武道館の解散ライブのラストチューンだった“Reborn”を、ここでも最後に歌った。
そもそも、2014年の再始動以降の「毎年必ずリリースとツアーがあるsyrup16g」の方が、むしろ違和感があったし(という人、長年のファンであればあるほど多いと思う)、このツアーが終わったらしばらく活動が止まるなんて、かつて何年もこのバンドが動くのを待ったことがある身からすると、なんてことはない。
むしろ、自然だと思う。本当だったら黙ってしばらく休んでもよかったのに、わざわざアナウンスしたということは、「少し空くだけで休止とか解散とかじゃないから心配しないでくださいね」と伝えたかった、つまりファンへの配慮から来るものだったと思うし。
というふうに、わりと鷹揚にかまえていたし、そういうつもりでリキッドは最後まで観ることができたのだが、この日のライブを観ているうちに、「うー、そうかあ、来年は動かないかあ……」という気持ちになってしまった、何か。
五十嵐のノドが不調だったのにもかかわらず、いや、たぶんそのドキュメント性も含めて、すばらしいライブだったからだと思う。あと、最後が“Reborn”だったので、よけいにそう感じたのかもしれない。
来年はがまんするので、2020年には何かアクションを起こしてくれることを望みます。あと、「しばらく休むって言ったけど、いい曲できちゃったからやっぱり動きます」みたいな展開に、結局なってしまいました。みたいなことも、ほんのちょっとだけ、期待しています。(兵庫慎司)
終演後ブログ