前作が激売れした北米トップ・クラスのバンドだからこそ、新作に対するプレッシャーを多少は感じていたはずだが、今作ではプレッシャーに負けないどころか新境地を開拓してくれた。ファン泣かせのアンセミック・バラードや、王道ハード・ロック・ナンバーがぎっしり詰まっているところはもちろんこれまでと変わらず。だがマット・ラングがプロデュースしたことも功を奏したのだろう、チャドのギター・ソロが頻繁に登場したり、大人数のかけ声をコーラスに取り入れてみたりと(M2の“ヘイ! ヘイ!”というかけ声部分がカッコよすぎ!)、趣を変えた部分が多く、バンドの良さは残しつつ、変化も十分に感じられる仕上がり。特に驚いたのは、ブレイク前の彼らについての歌“ディス・アフタヌーン”。ハードなジェイソン・ムラーズとでも言いたくなるキャッチー&リズミカルなメロディで、これまでの気難しげな彼らのイメージからほど遠い曲。しかもこれをラスト曲に選んだことからも、冒険を恐れず、むしろ楽しんで制作したのが伝わってくる。自分達の地位に甘んじず、自ら変化を起こしたニッケルバックの新風となる1枚。(上田南)