「世界最高のロックンロール・マシーン」を夢想して爆走していたはずのThe Ga Ga’sからギターのロブが脱退。残ったトミー(Vo)、トシ(B)、Jことジェイソン(Dr)の3人が新たに元Ariex-Xのマークを迎えて走り出した途端、The Ga Ga’sの時にはノミネート止まりだった「ケラング!」のベスト・ブリテッュシュ・ニューカマーをあっさり獲得――というトピックが象徴している通り、この新バンド=スレイヴス・トゥ・グラヴィティの音に詰まっているのは、浮世離れしたロックンロールの夢や理想ではなく「現実」だ。90年代グランジ(というか、かなりはっきりニルヴァーナだろう)のダルな焦燥感を、UKヘヴィ・ロック・シーンが鍛え上げてきた音の肉体美でもって再現していくようなSTGの楽曲とサウンドには、ロックンロール・スターダムを担う者の輝きではなく、カラス飛び交うストリートのさびれた諦念をガソリンに変えていくだけの強さがある。“ミスター・レギュレイター”の衝動逆噴射ぶりも、退廃感で窒息して意識が遠のいていくような“ミーンタイム”の空気感も、すべてがささくれたリアリティに満ちて響く名盤。(高橋智樹)