匂う音

クリープハイプ『百八円の恋』
2014年11月05日発売
SINGLE
クリープハイプ 百八円の恋
映画『百円の恋』の主題歌とはいえ、“百八円の恋”って、何て現実感の溢れたタイトルなんだろう。この曲に限らず、カップリングの二曲も含めて、今作からは、汗やラーメンや畳みたいな生活の匂いがぷんぷんする。《誰かを好きになる事にも/消費税がかかっていて/百円の恋に八円の愛/ってわかっているけれど》というフレーズなんて虚しくて切なくて、でも正しくて苦しくなる。《痛い》から《居たい》へと変わっていくサビの連呼も、何気ない様子に見えても、生きることに必死な全ての人の心の叫びに聞こえてくるのだ。また、二曲目の“君の部屋”や、三曲目の“ラジオ”は、青春の味がして、涙目になってしまうほど甘酸っぱい。
彼らが描く、過剰に見えて日常な物語は、「誰か」なんかいない、ひとりひとりが世界の主役であることを指し示しているようである。だからこそ、日本武道館を二日間も熱いオーディエンスだけで埋め尽くすことが出来たんだろう。能天気に騒ぐだけでは孤独を埋めることが出来ない、繊細な人たちに寄り添う彼らの楽曲が、今のロックシーンにおいて求められていることは必然だと思う。 (高橋美穂)
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