音の宇宙で光るサイケの核心

ミステリー・ジェッツ『カーヴ・オブ・ジ・アース』
発売中
ALBUM
ミステリー・ジェッツ カーヴ・オブ・ジ・アース
前々作『セロトニン』(10年)以前のインディ・ロック的躍動感、テキサスの空気をたっぷり吸い込んだフォーク/ブルース色の強い前作『ラッドランズ』(12年)――とその時々で大きな変化の振り幅を描いてきたミステリー・ジェッツだが、4年ぶり5枚目となる今回の新作は、彼らの核心とも言えるUKロックのサイケデリック・サイドを最大限にブーストしたアルバムと言える。ベーシスト交替、ラフ・トレードを離れDIY体制でのアルバム制作、という数々の転機を経て生まれた今作。ブレインの凛としたファルセットが純白の闇と響き合う“テロメア”、シューゲイズ・ブルースとでも呼ぶべきめくるめく音像を編み上げた“ボンベイ・ブルー”、透徹したピアノ・バラードの果てに悠久の音の銀河を描き出す“1985”。『狂気』期のピンク・フロイドを10年代版の肉体性と解釈でハイパーに再構築した“ブラッド・レッド・バルーン”の濃密な恍惚感……『全地球カタログ』の創刊者スチュアート・ブランドの影響を随所に滲ませながら、サイケ/プログレ/シューゲイザー/インディーの枠組みを無効化する音風景を提示してみせた進化作。(高橋智樹)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする