現在アリーナツアー「dance in a circle '15」中のYUKIの最新作は、映画『グラスホッパー』の主題歌のピアノバラードだ。ツアー初日で初披露した際、YUKIは今作を「もう雨は止んだよって、肩を抱いてあげるような気持ちで作った」と紹介した。それは、無差別殺人で婚約者を失った主人公を含め、生きる意味を模索する映画の登場人物たちへの思いだろう。しかし、本作には甘い慰めの言葉や同情は存在しない。歌声は、温かな包容力というよりも生々しい揺らぎに満ち、何かを切実に信じ抜く決意を含んでいるように聞こえる。なぜか。それはYUKIが「生き続けていくこと」を歌っているからだ。私たちの人生は、誰が見ても明白な「雨」の期間より、雨が上がった後に哀しみを抱いて生きる時間のほうが途方もなく長く、苦しいのではないだろうか。それでも生き続けていかなければいけないこと。YUKIはそれを知っている。だから、雨が上がった時こそ、YUKIは《優しさを持って　哀しさを持って　生きる／だから私は強いの》と、自ら凛と立つ強い姿を見せてくれるのだ。YUKIの真の優しさに満ちた傑作。（林田咲結）