ストーンズとピクシーズをマッシュアップし、白昼夢的なヴェールで包んだようなサウンドでUKから人気に火が付いたUS・ケンタッキー州出身のケイジ・ジ・エレファント。3枚目の『メロフォビア』(2013年)に続くこの新作では、共にツアーをした経験があるザ・ブラック・キーズのダン・オーバックをプロデューサーに迎えた。年齢的に近く、音楽的なルーツや求めるサウンドの質感など、シンクロするところも多かったのだろう。ダンは、彼らのエネルギッシュなバンド・アンサンブルや、きらりと光るポップ性、遊びある発想にさらに磨きをかける手助けをしている。今回はとくに、60年代ロックやポップス風の甘く切ないメロディやハーモニー、ギター・フレーズがフィーチャーされた。懐かしいタッチの曲の中にフレッシュな空気を送り込むように、一発録りのレコーディングで、バンドのテンションや演奏のムードを活かしているのがいい。これまでは、破天荒さが滲み出たちょっとトンがったポップ感が面白いバンドだと思っていたけれど、こんなグッド・メロディと、歌心を描けるバンドだったのかと、聴き惚れるアルバムだ。(吉羽さおり)