原点回帰と深化を見せる新体制作
ヤック『ストレンジャー・シングス』
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ALBUM
ギタリストの片割れダニエルの脱退を受け、トリオ編成で制作された前作『グロウ&ビホールド』から2年半。3枚目の今作は、新メンバー加入後、4人編成による(一昨年のEPを挟んで)初のアルバムになる。ちなみに前作はクリス・コーディ(ビーチ・ハウス、グリズリー・ベアetc)によるプロデュースだったが、今作はセルフ・プロデュース。そのクリスによるクリアで丸みを帯びたプロダクションも特徴的だった前作に対して、今作はデビュー時にも通じるローファイな耳触りが際立つ印象も。が、前作を機にシューゲでラウドな鳴りが後退し、前面に押し出されたウォーミーでメロディアスな趣向は今作でいっそう色濃く表れている。なかでもベースのマリコ・ドイがヴォーカルを取り、アコギのフォーキィな音色も添えたM3やM7が素晴らしい。アメリカーナな感覚をたたえた近作のダイナソーJr.~J・マスキス、あるいはカート・ヴァイルなどにも通じる懐深くて瑞々しいレイド・バック。そんな気分を今作ではそこかしこに感じ取ることができるよう。キャリアの仕切り直し!? いやいや、バンドとしてのタフな成長をものにした、堂々の力作だ。(天井潤之介)