時代精神とアンビエント

ブライアン・イーノ『ザ・シップ』
発売中
ALBUM
ブライアン・イーノ ザ・シップ
2010年の『ザ・スモール・クラフト・オン・ア・ミルク・シー』以来、精力的な活動が続くブライアン・イーノの新作。アプローチとしてはよりアンビエントなサウンドを発生させながら、歌や朗読などのパフォーマンスとは違った、無作為的でサンプリングに近い声や語りを織り込んでいく作りになっていて、ある意味でブライアンの作風から連想される音像として真骨頂ともいえる内容になっている。こうしたアンビエント・サウンドと自由連想法的なヴォーカルを打ち出す手法はどこか無意識の領域を探るようなものだという印象を受けるが、ブライアンのコメントによれば、本作は現在の時代精神の行方を探るのがひとつのテーマでもあるようなのだ。タイトルの『ザ・シップ』とはタイタニック号のことで、当時世界最大規模の客船でありながら処女航海で沈没し、その2年後に文明が第一次世界大戦という大惨禍に見舞われたというイメージがここでは紡がれていく。それでも時代精神が刷新されていく中、それはすべて幻想だと指摘するべくヴェルヴェット・アンダーグラウンドの“アイム・セット・フリー”のカヴァーも試みられている。(高見展)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする