アントニー・ヘガティが、その名をアノーニと改めて発表する初のアルバム。音楽的にはジョンソンズ時代と大きく様相を異にしており、ハドソン・モホークとワンオートリックス・ポイント・ネヴァーが手がけたバック・トラックは、最先端のエレクトロニック・ミュージックと呼んでしかるべきものになっている。そのモダンなサウンドとアノーニの幽玄なヴォーカルの組み合わせは、ただもう素晴らしい。先行公開された“4ディグリース”を聴いた瞬間から、すっかり耳を奪われてしまった。時おりイレイジャーとかコミュナーズを思い出したりもしながら、当然のように曲の構造は、ポップ・ミュージックとは一線を画した刺激に満ちている。個人的には、アントニー・アンド・ザ・ジョンソンズの作品よりものめり込める内容だ。
歌詞の内容も“ドローン・ボム・ミー”や“オバマ”といった曲名だけで、これまで以上に政治的な内容になっていることがわかる。彼女は、確固たる決意と使命感を持って名前と音を一新し、アーティストとしての次章に飛び込んでいったのだろう。その最初の素晴らしい成果に向け、最大限の賞賛を心から送りたい。(鈴木喜之)
美しく強烈で鋭くも優しい
アノーニ『ホープレスネス』
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