2015年11月よりスタートした「風の果てまで」ツアーを6月5日に終える斉藤和義が、45枚目のシングル『マディウォーター』を発表。シカゴブルースの顔、マディ・ウォーターズの曲名を捩ったMANNISH BOYSというユニットを中村達也と組む彼だけに、タイトルを見てニヤッとしてしまう。ただ、不倫を題材とするテレビ朝日系ドラマ『不機嫌な果実』の主題歌である本曲では、人名ではなく直訳して《濁り水》と解釈。汚れた女心を淫靡に歌い上げ、シンコペーションを多用したリズムで不安定さを演出。後戻りできない焦燥感と苛立ちを、コード感や間奏のスラップベースで描き切っている。対してロサンゼルス録音の“Call me Now”は音楽的冒険心を爆発させたサイケデリックな逸品。加えて、最新ツアーで披露された弾き語りの“月光”と“ワッフル ワンダフル”も収められている。ライブ音源の収録は今でこそ珍しくなったが、昔の、特に海外作品では普通でスタジオ録音にはない味を愉しむのが乙だった。偉人への敬意と音楽愛を感じさせるこの粋な計らいにも、思わずニヤッとしてしまう。(秋摩竜太郎)