音楽がなしうること

U2『U2 イノセンス + エクスペリエンスライヴ・イン・パリ』
発売中
DVD
U2 U2 イノセンス + エクスペリエンスライヴ・イン・パリ
これはすごい作品だ。音楽が何のためにあるのか、音楽がなしうることは何か。U2は全身全霊を込めて伝えようとしている。

U2最新ツアーのライヴ映像作。10代の頃の無垢なU2と、経験を重ねた現在のU2を、音楽/音響/映像/セット/演出が高次に融合した凄まじいショウで壮大に描いていく。本作が特別なのは、同時多発テロ事件で延期となったパリ公演の振り替えライヴを収録したものだからだ。内容は当然メッセージ色の強いものとなり、彼らの人生の道程を語るショウが、現在の世界が抱える先鋭的な問題点をあぶり出すことになった。

ここで彼らが訴えているのは「憎しみよりも愛を」に尽きる。言葉にしてみればありきたりなメッセージでも、ひたむきで強い思いが凄まじい説得力を生み観客を巻き込んでいく。最後に、テロ事件に巻き込まれたイーグルス・オブ・デス・メタルが登場し、パティ・スミスの“ピープル・ハヴ・ザ・パワー”をU2と共に歌う。ちょっと気の利いたバンドならこんなミエミエのクサい演出はしない。だがそれをやりきってしまう愚直なまでの本気こそがU2の、そして音楽の力なのだ。(小野島大)
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