冥想のダーティ・トリップ

ゴンジャスフィ『カルス』
発売中
ALBUM
ゴンジャスフィ カルス
2008年よりWarpからのリリースを続け、本作が3枚目のアルバムとなるプロデューサー/シンガー・ソングライターのゴンジャスフィ。メキシコ系の母とエチオピア系の父のもとサンディエゴに生まれ、音楽活動と並行してヨガ・インストラクターとしても活躍するという変わり種だ。ローファイ/インダストリアルな不気味さと、サイケ/エキゾチックな陶酔感を併せ持つその音楽性は、一聴すれば分かる特異さを振りまいている。以前はサイケ・フォークと共振するトラックを制作したり、前作『MU.ZZ.LE』はヒップホップに寄せたビート・アルバムとなっていたが、この新作では彼の音楽的背景が一層混沌として渦巻いており、また自我に深く向き合う冥想の感覚を伝えている。ノイジーなのに、どこか静謐で潔癖な印象をもたらすサウンドだ。サントラ仕事なども嵌りそうなタイプなので期待したい。でも、フライング・ロータス作品に客演、あるいはジェイ・Zがサンプリングするなど話題に上る機会を得ながらも、キャリアを進めるほどにむしろ俗世とは懸け離れ、独自の立ち位置からポップ・シーンにインパクトをもたしている点がキモだ。(小池宏和)
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