6年ぶり10作目。前作は5年ぶりだったから、彼らは21世紀になってから2枚のアルバムしか出していなかったことになる。彼らのように早くから自己の音楽性や世界観を確立していて、なおかつ歳月を経ても才能が涸れていないヴェテランにとって、何より重要なのはモチヴェーションであり、それを楽曲に焼き付け、完璧な形で熟成させていく時間だ。トレンドに左右されない、良質なメロディと深い歌詞、味わい深い歌と演奏。音楽誌の表紙巻頭を飾るような派手なトピックやヒット・パレードを席巻するような同時代性はなくても、長く、深く愛され続ける密度の濃い楽曲がある。その絶対的な安定性に、いつまでも世界が1990年であるような錯覚さえ覚えてしまうが、その世界は確実に深化している。「ここ」と題された新作は、自分の足元を見つめ直し、今ここにある人生を大切にしたいという思いが焼き付けられている。50歳になって天命を知る。自分に残された時間と役割、自分のできることの限界を知り、その中で精一杯誠意を尽くした結果がこれである。彼らのペースにつきあい、その曲を聴いて自分の人生を見つめ直すのも悪くない。（小野島大）