「恐るべき人類」の冒険心

ジ・オーウェルズ『テリブル・ヒューマン・ビーイングス』
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ALBUM
ジ・オーウェルズ テリブル・ヒューマン・ビーイングス
デビュー・アルバム『ディスグレイスランド』から“フー・ニーズ・ユー”がiPad Air 2のCM曲に起用されたかと思えば、休止期間明けの昨春ダラス公演では舞台上でエンジニアと大立ち回りを演じたり――と話題性に事欠かないジ・オーウェルズ。3年ぶりとなるニュー・アルバムに先駆けて、86秒ナンバー“バディー”、7分超えの“ダブル・フィーチャー”、と思いきり振りきったシングル曲を連発してきたが、今作ではかつての無邪気なガレージ・オルタナ感から一歩も二歩も踏み込んで、ピクシーズあたりにも通じる、気怠くもスリリングなドライヴ感を、ストロークス的な音の抜き差しのバランスによって描き出している。そしてそれによって、マリオ・クオモのヴォーカルのラフでアンニュイな妖気が格段にくっきりと浮かび上がってくるのが印象的だ。“ゼイ・プット・ア・バディー・イン・ザ・バイユー”や“クリーチャーズ”が描き出す、サイケ&ポップな白昼夢感。“フライ”、“ヴァケーション”のシンプル&ソリッドなビートが体現する痛快な疾走感……野性や天性ではなく冒険心から新たにロックを紡ぎ始めたことを窺わせる進化作。(高橋智樹)
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