こんなお父さんなら共に闘える

斉藤和義『遺伝』
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SINGLE
中卒の父(阿部サダヲ)が偏差値41の娘と奮闘する受験ドラマ『下克上受験』主題歌である“遺伝”。3連のカントリータッチの曲は、「カリカリしてもしょうがねーぜ」と言ってるような脱力感が、斉藤和義の真骨頂。諦念めいた哀愁から確かな希望を拾い出す歌詞が泣ける。こんな父親なら背中をじっと見てしまう。スライドギターにマンドリンなど棹物が重なる演奏は斉藤好みだが、ありそうでなかった感触のアレンジだ。その理由が2曲目の“行き先は未来”にありそうな気がしている。これは映画『超高速!参勤交代 リターンズ』主題歌で、なんと細野晴臣(B)と林立夫(Dr)が参加。ティンパン・アレーのリズム隊と、鈴木茂の気分で演奏したのだろうか。堀江博久のピアノもいい感じの、アコースティックなロックンロールは最近の細野ソロ作品に通じるものを感じるし、それが“遺伝”にも遺伝している気がする。3曲目“ひまわりに積もる雪”は資生堂のWEBムービー『逆さに降る雪』主題歌で、シンプルな演奏でゆったりと歌うラブソング。5月からの弾き語りツアーが楽しみになる3曲だ。(今井智子)