はみ出す思いこそが可能性だ

ホセ・ジェイムズ『ラヴ・イン・ア・タイム・オブ・マッドネス』
発売中
ALBUM
ホセ・ジェイムズ ラヴ・イン・ア・タイム・オブ・マッドネス
これは「狂った時代にこそ求められる愛」か、それとも「狂おしい愛のひととき」か。過去作に触れてきたリスナーにも驚きの内容と言えるアルバムになったはずだ。ニュー・ジャズ/新世紀型クロスオーヴァーのシンガーとして優れた作品の数々を残してきたホセ・ジェイムズだが、今回は彼の口からはっきりと、ジャズから脱却するステイトメントが放たれている。MVも公開された“リヴ・ユア・ファンタジー”は、これまでには考えられなかったキャッチーなディスコ・ファンクであり、“レイディース・マン”と並んで中盤の華やかでファンキーな時間を担っている。また、セクシーなトラップ・ソウルの“オールウェイズ・ゼア”や、ポスト・ダブステップの“ホワット・グッド・イズ・ラヴ”も、彼の歌声をより現代的に運ぶグルーヴとして鳴り響いている。ビリー・ホリデイのカヴァー集だった前作がいかにもジャズ・ヴォーカリストらしい作風だったから、今回はその反動として「非ジャズ」な作風を狙った部分があるのかも知れない。幅広いリスナー層に訴えかける一枚となったのは間違いないし、結果的には現代ジャズの可能性を示す作品として評価されることもあり得る。(小池宏和)
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