敬愛する某音楽家に「え、Official髭男dism聴いたことないの!?」と、やや呆れ気味に迫られ、その場で聴かせてもらったのが本作だった。で、すぐに一筋縄ではいかないポップミュージックをクリエイトするその音楽家が、たとえどこかに同業者としての嫉妬心があったとしても、それを飛び越えてこのバンドをレコメンドする理由がわかった。絶対的な曲の良さが澄み切った音楽愛に由来しているのは明白だからだ。ブラックミュージックをベースに世の中に存在するあらゆる音楽をポジティブに享受し、そのうえで不特定多数のリスナーに響くポップネスというものを導き出せるソングライターがいる。さらにそのソングライターには大衆に向かって放たれるべき声質と歌唱力も備わっている。そして、よどみのないポップミュージックとはこんなにも生々しい楽しさと切なさに満ちていると体現するバンドサウンドが鳴っている。特に2曲目、3曲目が素晴らしく、近年ここまでスティーヴィー・ワンダー直系の色あせることのないソウルをダイナミックに継承している日本の若いバンドはいないと思う。あっぱれ、だ。(三宅正一)