どこにも辿り着かないロードムービー

豊田道倫『POP LIFE』
2009年01月01日発売
ALBUM
豊田道倫 POP LIFE
≪言葉はあきた/仕方なくつかってる/どうでもいい≫。アルバムはこんな歌い出しで幕を開ける。機械でピッチを無理やり上げた声は、CDの故障かと思うくらいの奇矯な響き。そして歌はこう続く。≪国も全部捨てて/気違いになれたら≫。

豊田道倫は途方も無い言葉の力の持ち主だ。誰もが見過ごしていること、見ないふりをしていることを言葉の力で撃ち抜く類のシンガーである。基本的には弾き語りだし、歌だって決して上手いわけじゃない。ピッチもダイナミクスもバラバラだ。でも、新宿の雑居ビルのライブハウスで聴いた“あの汚くなった靴をあの娘はひとりで買ったのだろうか”で思わずちょっと泣きそうになったことを、僕は忘れていない。

約一年ぶりの新作。タイトルの軽い言葉とは裏腹に、すごくヘヴィな感触だ。特に圧巻は後半。“for you”の10分以上にわたる轟音ノイズから、まるで白昼夢のような“14番ホーム”“熱海にて”。そしてラストはコーネリアスのカバー“Star Fruits Surf Rider”。グロテスクな滑稽さ、情けなさ、そして美しさが凶暴なまでに同居している。(柴那典)
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