ビビオ印の環境音楽

ビビオ『ファントム・ブリックワークス』
発売中
ビビオ ファントム・ブリックワークス
近年は作品毎に異なるアプローチを打ち出す傾向にあるビビオ。ゴティエらゲストを招いた昨年の『ア・ミネラル・ラブ』に続く最新作は、いわく“場所”がコンセプト。この何年間に書き溜めた即興的な楽曲のコレクション、だという。

前作ではソウルやディスコのテイストを取り入れたサウンドが特徴的だったが、本作はまるで別物。生音の響きやフィールド・レコーディング的な手法にフォーカスが当てられた前々作『シルバー・ウィルキンソン』に通じるところもなくはないが、本作の方がもっと抽象度が高い。いわゆるドローン/アンビエントのスタイルで構成されており、「これらの音楽は、特定の景色や時間に対する心の扉を僕に与えてくれた」という本人の言葉は象徴的だ。しかし、そこに添えられた電子音やピアノの抒情的なメロディ、あるいは遠くで聞こえる子供の声や誰かの会話が醸し出すノスタルジックなイメージは、ビビオの作品に通底する普遍的な魅力だといえる。私家版的な趣の強い本作だが、ここで得られたイマジネーションが次の作品に還元されたとき、はたしてどのような音楽が生まれるのか。期待が募る。(天井潤之介)
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