ブロック・パーティーのボーカリストの3年ぶり3枚目のソロ。
とはいえ本作はブロック・パーティーとも、ケリー名義で発表された過去の2作ともまったく異なる。XXXチェンジがプロデュースしたバリバリのエレクトロ路線だった1作目、ディープ・ハウス〜ガラージの2作目とは打って変わって、フルネーム名義でリリースされた本作は、フォーキーでナチュラルなアコースティック路線で、かなり驚かされた。なんでも昨年末に生まれた娘と自分の関係を描いたアルバムだそうで、アルバム・タイトルはそれを表している。ジャケット写真が示すようにその表情は柔和だ。
フォーク、オールド・タイミーなジャズやポップ・ソング、ソウル、レゲエなどが、ナチュラルな音響で鳴らされている。決して声高にならず、丁寧に、穏やかに、柔らかに歌われる歌は繊細にして深い。これは新たなシンガー・ソングライターの誕生と言っていいだろう。ブロック・パーティーの最新作『ヒムズ』での内省的な方向性は今作への布石だったのかもしれない。ケリーの声はどこまでもポジティブで、日向の縁側のように温かい。(小野島大)
父から娘へ
ケリー・オケレケ『ファザーランド』
発売中
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