大人が本気で遊ぶとこうなる

ザ・ビーピーエー『アイ・シンク・ウィア・ゴナ・ニード・ア・ビガー・ボート』
2009年01月28日発売
ALBUM
ザ・ビーピーエー アイ・シンク・ウィア・ゴナ・ニード・ア・ビガー・ボート
当初のノーマン・クックの説明によれば、25年前から録りためてきた音源がこのたび発掘され、せっかくなのでリリースすることにしたということだが、その気が利いているのかいないのかよく分からない冗談で、彼がごまかそうとしているものとは何なのか。“トー・ジャム”のPVでは自ら全裸になり、股間を巨大なセンサーバーで隠して腰をぐりんぐりん回しているノーマン先生だが、よく観てほしい、顔が笑っていない。

つまり、表面的にはノーマンのお遊びプロジェクトであるということになっているこのBPAだが、そんなことはまったくないということである。音にしてもそう。デヴィッド・バーンやディジー・ラスカルをはじめ、多彩なゲスト――ノーマンによれば「飲み友達」――を集めて、ブレイクビーツからヒップホップ、ダブにロック・バラードまでやりたい放題。しかし散漫にならないのは、音の密度とプロダクションの緻密さゆえだろう。もちろんノリ一発で作ったものではありえない。では、このギミックめいたコンセプトはいったい何だ、ということになる。

思うに、彼はもう一度イチからパーティしようとしているのではないか。ファットボーイ・スリムという鎧を脱ぎ捨て、文字通り裸一貫で。ダンス・ミュージックというのはもともとおバカなものだったし、それを大人が真剣にやるからカッコよかったのだ、もう一度それをやろう、と。ノーマンが「ダンス・ミュージックをガキどもから取り戻せ!」と叫んだかどうかは知らないが、気合い入っていることは確か。(小川智宏)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする
音楽WEBメディア rockin’on.com
邦楽誌 ROCKIN’ON JAPAN
洋楽誌 rockin’on