「平和な明日」への予感

ギャング・ギャング・ダンス『カズアシタ』
発売中
ALBUM
ギャング・ギャング・ダンス カズアシタ

待っていた。というか、もうこのままずっと活動休止状態なんだろうと思っていたら、7年ぶりの新作到着! アニマル・コレクティヴと双璧をなす、NYゼロ年代のエクスペリメンタル音楽シーンを牽引した音楽集団の6作目のスタジオ・アルバム。エレクトロニカやシューゲイズ、インダストリアル、サイケなど、様々なスタイルの楽曲をトライバルなリズムや、トリップ感溢れるリズムで融合させてきた彼らの音楽的な先鋭性は、今作でももちろん健在。しかしこの最新作のサウンドには、どこか神聖とも言えるような美しさを感じてしまう。前作『アイ・コンタクト』までは、メンバー全員でインプロビゼーション的にサウンドを作り上げていくスタイルをとっていたが、今作は、まずブライアン・デグロウが楽曲のほとんどを作り上げ、それをもとにメンバーがアレンジを加えていくという形をとった。ビートやリズムのユニークさにも増して、メロディの繊細さが際立つ作品になったのには、歌詞で伝えるメッセージにも重点を置こうという思いもあったのではないかと推測する。GGDの元メンバーであり、現在も友人関係が続いているというタカ・イマムラに子どもが生まれたことにインスパイアされ、その子の名前にちなんでタイトルがつけられた“カズアシタ”は、「平和な明日」への予感を歌う歌である。シューゲイズなエレクトロ・サウンドが幻想的に響く中、リジー・ボウガツォスのホーリーな歌声が素晴らしく心を震わせる。こんな閉塞的な世の中にあっても、一筋の希望は確かに存在するという予感、気配を感じたいというデグロウの思いが明確に表現された楽曲であり、その予感はひとつの癒しでもある。7年ぶりに彼らが新作を制作したのは、ただの気まぐれではないはずだ。(杉浦美恵)



『カズアシタ』の詳細はこちらより。

ギャング・ギャング・ダンス『カズアシタ』のディスク・レビューは現在発売中の「ロッキング・オン」8月号に掲載中です。
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ギャング・ギャング・ダンス カズアシタ - 『rockin'on』2018年8月号『rockin'on』2018年8月号
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