コーラル・モーフォロジックなる海洋生物学者とミュージシャンの芸術科学デュオと共作されたニュー・アルバム。映像作品も付随する(※公式サイトで公開)所謂オーディオ・ビジュアル・アルバムとなっていて、似た形態としては『ODDSAC』(10年)に続いて2作目になる。なお、今回のバンド・メンバーはパンダ・ベアを除く3人。流動的な活動編成で知られる彼らだが、この組み合わせでの音源は初めてかもしれない。
昨年、アマゾンの熱帯雨林でライブ録音されたEPをリリースしたアニマル・コレクティヴ。また今年に入り、初期の名盤『サング・トンズ』の再現ライブを行うなど、かつてのチルでサイケデリックなモードへの回帰も窺わせた矢先に届いた今作。基本的にエレクトロニックを中心に構成していながら、そうした一連の流れを裏付けるヴァイブがここには共有されている。少なくとも、コンテンポラリーなプロダクションやビート・メイクが際立った2年前の前作『ペインティング・ウィズ』とは別物。パーカッシブというよりアンビエントなテクスチャーが織りなす浮遊感は、強いていうなら『メリウェザー・ポスト・パヴィリオン』(09年)の頃のサウンドにも近いかもしれない。あるいは、16年のHCAN(ホステス・クラブ・オールナイター)で真夜中に彼らのパフォーマンスを体験された方は、そのときの記憶を思い起こしてもらいたい。
ヒプノティックに揺れる音の波が満ち引きを繰り返し、環境音や自然音も織り交ぜ意識の奥底へ聴き手をゆっくりと誘うような、あの瞑想的な境地。とりわけ終盤の、ぐっとアブストラクトな度合いを増す“コーラル・リアライゼーション”以降の展開は強烈。音源だけでも十分に効果テキメンだが、より深く潜りたい方にはぜひ映像と併せた視聴をお薦めしたい。(天井潤之介)
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アニマル・コレクティヴ『タンジェリン・リーフ』のディスク・レビューは現在発売中の「ロッキング・オン」10月号に掲載中です。
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