まだまだ聴きたかった!!

クリス・コーネル『クリス・コーネル【デラックス・エディション】』
発売中
ALBUM
クリス・コーネル クリス・コーネル【デラックス・エディション】

18年に出たジョニー・キャッシュが残した詞に曲をつけたのが最後の録音と言われるクリス・コーネルの歌声は、じつに胸に染みるものだった。その録音からほどなくして彼が自死するとは今でも信じられないが、自分を追い込んでいくタイプの人ではあった。日本ではあまりに人気も知名度も低すぎるクリス・コーネルだが、最初に蹴破ったシーンの扉や作品、交友録からするとカート・コバーンエディ・ヴェダー等と並んで認知されなければウソだろう。それだけに17年の死は残念でならないが、改めてグループやレコード会社の枠を超え、その軌跡をたどる、こんな温かい好コンピがリリースされるのも、多くの人々にその価値が認められていればこそだ。
 
80年代後半、シアトル周辺のグランジの動きの中で最初にメジャー契約を獲得して飛び出したのがクリスがボーカルのサウンドガーデンで、その攻撃性を持つヘヴィネスとパンク以降の世代ならではの突破力は新鮮な驚きだったし、以後のシーンに与えた激震は、今も大きな影を残している。その後、共にシアトル・シーンを作り上げたマザー・ラヴ・ボーンのアンドリュー・ウッドのトリビュートでジェフ・アメンパール・ジャム)らとテンプル・オブ・ザ・ドッグをやったり、00年代にはトム・モレロらレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの面々と作ったオーディオスレイヴでの活躍ぶり、その間にも3枚のソロ作を出すなど精力的な活動は忘れることができない。

今回のベスト盤、スタンダードとDX版があるが、ここは未発表やライブを含め全64曲からなる4枚組が圧倒的にお薦めだ。ディスクIは当然ながらサウンドガーデンのナンバーがファースト・シングルの“ハンテッド・ダウン”からドーンと並び、ディスクIIはオーディオスレイヴの楽曲が中心だが、彼のもっとも有名なナンバー『007 カジノ・ロワイヤル』の主題歌“ユー・ノウ・マイ・ネーム”あたりは、いまだからこそじっくり聴ける。

スラッシュのアルバムでの共演ナンバーで始まるディスクIIIは、サンタナとの“胸いっぱいの愛を”(めちゃくちゃカッコいい)やライブ・アコースティックの“イマジン”が聴けたりとお楽しみは多く、ディスクIVはライブ集で、サウンドガーデン、オーディオスレイヴ、ソロ各種が聴けるがプリンスの“ナッシング・コンペアーズ・トゥ・ユー”やU2の曲にメタリカの歌詞をマッシュアップさせた“ワン”といったレアものが聴ける。オーソドックスにまとめつつ、マニアの喜ぶところも押さえた、クリス追悼にふさわしい好作品だ。(大鷹俊一)



『クリス・コーネル【デラックス・エディション】』の詳細はUNIVERSAL MUSICの公式サイトよりご確認ください。

クリス・コーネル『クリス・コーネル【デラックス・エディション】』のディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』2月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

クリス・コーネル クリス・コーネル【デラックス・エディション】 - 『rockin'on』2019年2月号『rockin'on』2019年2月号
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