万感極まれり

椎名林檎『Ringo EXPO 08』
2009年03月11日発売
DVD
椎名林檎 Ringo EXPO 08
昨年11月28〜30日の3日間で、述べ55,000人を動員した、さいたまスーパーアリーナでの「(生)林檎博」。自身が「過去最高に大勢」と言うように、バンドメンバーも観客も、彼女のキャリアの中で最大規模のライブとなった。デビュー曲“幸福論”から新曲“余興(仮)”までの10年を網羅したセットリスト、愛息のナレーションや、兄・椎名純平とのデュエットといったサプライズ……。一つ一つの演出が宝物のようで、胸に迫る。

これまでの林檎のライブは、彼女自身もオーディエンスも、互いの実態が掴めないもどかしさからだろうか、どこか距離の取り方を測りかねているような、独特の距離感があった。だが、繭に包まれた角のヘッドドレス姿から、初期を思わせるようなスリップドレスへと、余計なものを脱ぎ捨て、オーディエンスとの距離を縮めていく姿には、繕いのない感謝と、共に音楽を享受する喜びが表れていた。きっと私たちは、これからこんな距離感で歩いていけるのだろう。当日は遠くて分からなかった彼女の晴れやかな笑顔を見てそう確信し、10周年記念祭はようやく終演した。(足達佳那子)
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