特別な「普通」を歌う

あいみょん『ハルノヒ』
発売中
SINGLE
あいみょん ハルノヒ
『クレヨンしんちゃん』の映画は毎回感動的なのだが、なぜ感動的なのかといえば、そこに描かれることのすべてが「普通」の延長線上だからだ。宇宙人が出てきたりタイムスリップしたりはするけれど、そんな状況においてなお、野原一家は普通だ。しんのすけはいつものようにお尻を出し、みさえはそのしんのすけをいつものように叱り、ひろしの足はいつものように臭い。彼らはそんな「普通」を守るために冒険をする。それが同じく「普通」な僕らの心を動かすのだ。

一方で、あいみょんもまた「普通」の延長線上にある出来事や風景を歌い続けているアーティストだ。過剰な内面性に溺れるでも、絵空事に逃げ場を求めるでもなく、ギリギリ手の届く範囲の風景と感情を切り取って歌にする。だからフィクションであろうとなかろうと、彼女の歌はリアルであり続けるのだ。

これはそんな両者がタッグを組んだ楽曲なのだから、素晴らしくないわけがない。野原家のはじまりを描きながら、かけがえのない「普通」がドラマチックに歌われる。シンプルなアレンジが、水のようにすっと心に染み入る。(小川智宏)
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