築き上げたネットワークが集結した最高傑作

ザ・ナショナル『アイ・アム・イージー・トゥ・ファインド』
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ALBUM
ザ・ナショナル アイ・アム・イージー・トゥ・ファインド

一昨年の『スリープ・ウェル・ビースト』は個人的年間ベスト10に楽勝で入る傑作だったが、日本ではもうひとつ伸び悩んでいる。なぜ届かないのか。確かにアーティスト写真を見てると、このオッサンたちがこれほどビビッドで美しい世界を奏でるのが連想しにくいのかもしれないが、最新の8枚目はさらに美曲が並び、そんな悲観的なボヤきも一発解消だ(断言!)。

2点において本作は極めて優れた武器を持っている。グループが培ってきた美意識が、女性ボーカルを大幅に加えることによって、より親しみやすくなっている点。そしてアルバムと同名の短編映画『I Am Easy ToFind』を得たことで、新たな位相で立体的に迫れる点だ。

アルバムと同時にリリースされる約24分と言われる短編映画は、映画『20センチュリー・ウーマン』(レインコーツやスーサイドの音を使ってた!)でアカデミー賞の脚本賞にノミネートされたマイク・ミルズ監督が撮ったもので、一部は既発表の“ライト・イヤーズ”のMVで観られるが、もともとグラフィック・デザイナー(ソニック・ユースなんかもやってる)だけにアート感覚に優れ、モノクロの叙情的なシーンと楽曲がみごとなコラボを見せる。ミルズはこのプロジェクトに対し〈お互いのことを真似し合うことが大好きな、遊び心と敵対心を持った兄弟のよう〉と言っているが、それが素直に頷けるし、アルバムはピアノを中心に最小限のサウンドで無窮の彼方への思いを描くようなこの曲をラストに置いて締めくくられている。

その対となるアルバム冒頭にあるのは、最初に先行リリースされた“ユー・ハド・ア・ソウル・ウィズ・ユー”で、スピード感を伴ったこの曲には、後期デヴィッド・ボウイのライブで好パフォーマンスを見せていた女性ベーシスト、ゲイル・アン・ドロシーがボーカルで加わり開放感と希望に満ちた道を照らし出す。そう、本作の大きな特徴がその1曲目をはじめゲスト女性ボーカルが入っている点で、ブルックリンのSSWシャロン・ヴァン・エッテンやアイルランドのリサ・ハニガン、フランスのノラ・ジョーンズと言われるミナ・ティンドル、もうベテランと言っていいディス・イズ・ザ・キットのケイト・ステイブルズと、実力派が揃い、じつに豪華にザ・ナショナルの世界を色づけている。

そんなミューズたちからの祝福を受けるマット・バーニンガーの無骨ながら繊細な曲たちに翼を与える歌声はどこまでもザ・ナショナル的でありつつ、これまでとは違った視界も広げ、素晴らしい。 (大鷹俊一)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』6月号に掲載中です。
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ザ・ナショナル アイ・アム・イージー・トゥ・ファインド - 『rockin'on』2019年6月号『rockin'on』2019年6月号
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