非主流(オルタナティブ)であり続ける男の復活

ペリー・ファレル『カインド・ヘヴン』
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ALBUM
ペリー・ファレル カインド・ヘヴン

ジェーンズ・アディクションの現時点での最新作が登場してから8年、先頃60歳の誕生日を迎えたペリーが18年ぶりのセカンド・ソロ・アルバムを完成させた。共同プロデューサーはトニー・ヴィスコンティ、同じくボウイ人脈のマイク・ガーソンやダーニ・ハリスン、テイラー・ホーキンス、トミー・リーといった豪華プレイヤー陣に支えられ、妻エティも歌声を添えており、フォーマットとしては、00年代に率いていたコラボ三昧のプロジェクト、サテライト・パーティーに近いのかもしれない。

が、サウンド志向はサテライト〜のサイケなパーティー・ロックでも、ジェーンズ〜のゴシック・ファンクでもない。それどころか、グラム・ロックに始まって、インダストリアルなハード・ロック、キャバレー調のピアノ・ポップ、エレクトロニカ、オリエンタル風味の変型チェンバー・ロック……と、見事に志向が異なる9曲を収録。流行を意識している様子は一切なく、テイラー&トミーとマット・チェンバレンという凄腕ドラマー陣が鳴らす強烈なビートとパーカッション、ラウドなギター、そしてあのアクの強いペリーの声が全編で響き渡り、とにかく濃い味付けの曲は、どれも芝居の一幕のよう。何しろ本作は、神話みたいなコンセプトに基づいているんだそうで、ラストはまさに参加者総出の大団円だ。一種のロック・ミュージカルだと考えれば納得が行くし、あまりの濃密さゆえに、聴き終えた時には、30分しか経っていないことに気付いて驚くに違いない。

そんなわけで相変わらずマイペースなペリーなのだが、浮世離れしているようでいて、シングル曲“Pirate Punk Politician”は、アメリカの現政権に宛てたプロテスト・ソングだったりもして。リアリティに抜かりなく目を配っている。 (新谷洋子)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。
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ペリー・ファレル カインド・ヘヴン - 『rockin'on』2019年7月号『rockin'on』2019年7月号
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