3月に行なわれた来日公演が完全ソールドアウトの大盛況を見せた、テキサス出身のインストゥルメンタル・トリオ。今夏のフジロックにも出演決定し、それを記念して過去のアルバムも含め一気に4タイトルが国内リリースされることになった。中でも本作は、これまでCD化されてないトラックばかり集めた要注目の特別企画盤だ。
バンドの紹介文では「タイのファンク・ミュージックをベースにした」という記述が目立つが、マーク・スピアーが奏でるギターは、なるほど確かに不思議なエキゾチック感を漂わせているものの、そこだけに強い影響源があるというより、様々な世界各地の音楽を(単にネットでつまみ食いするのではなく、地元ヒューストンのバックグラウンドに根付いた形で)独自に消化/昇華しているように見受けられる。配信でも聴けない本作の終盤4曲は、タイのアーティストによるナンバーと並べて、映画『シシリアン』のテーマ(※エンニオ・モリコーネ作曲)、イギー・ポップも歌ったセルジュ・ゲンズブールの代表作、YMOのバージョンで知られるマーティン・デニー“ファイアークラッカー”という興味深いカバー選曲になっていて、「異国情緒ではなく無国籍感覚」とう印象を強めた。そして、最後に細野晴臣というアーティストへの繋がりが見えたことで、このフィーリングは日本人にとって非常に馴染み深く捉えられるものではないかと思えてくる。
また、同時リリースされる新作でセカンドのダブ・アルバムだという『Hasta El Cielo』は、まだ1曲しか聴けていないが、グルーヴがうねりすぎないタイトなリズム隊に支えられたドリーミーなサウンドが、ダブ化を施されて、さらにどんな次元へと拡大していくのか、大いに興味をそそられる。(鈴木喜之)
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