映画が先か、音楽が先か

ビッフィ・クライロ『バランス、ノット・シンメトリー』
発売中
ALBUM
ビッフィ・クライロ バランス、ノット・シンメトリー

英国はもとより、欧州全域で絶大な支持を獲得しているスコットランド出身の3人組怪物バンドによる最新作は、同名の映画のサウンドトラック・アルバム。2016年発表の第7作、『エリプシス』以来のスタジオ録音盤ということになるが、これはもう普通に第8作として受け止めるべきものなのではないだろうか。映画に伴うものではあれ、完全にビッフィ・クライロ然とした高品質作品である。

映画に伴う、というお決まりの言い方をしたが、現実にはその逆で、まずは彼らが音楽を作り、それに伴う物語性を踏まえながら映画が製作されたのだという。実際、このアルバムには落差の大きなドラマティックさ、壮大なスケール感と緻密さが伴っているが、それはサウンドトラックであるがゆえではなく、そもそも彼らの音楽がそういうものだからなのだ。

こうした制作プランは映画監督側からバンドに持ち掛けられたものだとのことだが、結果、そうした逆転の発想により、彼らの音楽が実は最初から映画的であったということを実証するアルバムになったといえる。同時に、「ビッフィ・クライロの音楽をもとに作られた」ということが映画の宣伝材料になり得るくらい、このバンドが大きな存在なのだという現実も、もっと広く認識されて然るべきだろう。

ひとつだけ疑問なのは、今回のリリース形態が“配信とアナログ盤のみ”であること。今っぽいといえば確かにそうではあるし、それもまた彼らが今作を通常のオリジナル新作と見做していないからなのかもしれないが、今作が彼らのディスコグラフィに明るくない人たちにも躊躇なくお薦めできる娯楽大作であることは間違いないし、“CDが出ないこと”が、本作が広く届けられていくうえでの妨げになら
ないことを願う。 (増田勇一)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』8月号に掲載中です。
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ビッフィ・クライロ バランス、ノット・シンメトリー - 『rockin'on』 2019年8月号『rockin'on』 2019年8月号
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