『CDコレクション:Vol.2』は、90年代のキャリアを総括する7枚組。昨年発売の『Vol.1』は、70年代に結成されたデフ・レパードが苦難を乗り越え、トップ・バンドになるまでを追っていた。『Vol.2』はその後の紆余曲折を記録している。『アドレナライズ』(92年)では、スティーヴ・クラークが録音途中にアルコール過剰摂取で死亡したため、残ったメンバーだけで完成させた。同作はそれでもファンが期待するデフ・レパードらしいアルバムに仕上がり、ヒットした。
バンドは後任ギタリストにヴィヴィアン・キャンベルを迎え、陣容を立て直す。だが、グランジのブームが到来するのだ。自然体の姿勢でネガティブな感情も隠さず、ざらついた生々しい音を鳴らす。そんなグランジが台頭したため、派手で陽気でデジタル感覚をとりいれた80年代型のハード・ロック/ヘヴィ・メタルは、一気に過去のものとされてしまった。多くのメタル・バンドが路線変更を強いられ失速するなか、80年代を代表する存在だったデフ・レパードも変わるしかなかった。
そうして作られたのが、彼らにしてはオーガニックな『スラング』(96年)である。チャートでは不発だったが、今聴き返すとロック・バンドとしての自分たちの地力を確かめ直すいい機会になっていたと思う。次の『ユーフォリア』(99年)で商業的に持ち直すが、同作は本来の路線に回帰しただけでなく、ベテランらしい落ち着きも感じさせる内容だった。彼らが以後も長く活動を継続できたのは、これら2作で自分たちのメロディと演奏がどうあるべきか、見つめ直す経験をしたからだろう。その他90年代のレア音源も収めた『Vol.2』には、デフ・レパードのサバイバルの秘密が詰まっている。 (遠藤利明)
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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』8月号に掲載中です。
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