汲めども尽きぬ必殺フレーズ

クリス・ブラウン『インディゴ』
発売中
ALBUM
クリス・ブラウン インディゴ

精力的にリリースを続けているクリス・ブラウンの新作。45曲入りというすさまじい大作だった前作『ハートブレイク・オン・ア・フル・ムーン』に倣って、今回も収録曲33曲という大作で、早くもアメリカのチャート1位を初登場で獲得するという快挙を成し遂げている。さすがのクリスだけあって、9700万回を超えるストリーミング再生を初週で記録。この楽曲数の多さがなおさらストリーミング回数を押し上げることになったのは確実だろう。一部にはチャート・ポジションのために楽曲数が多くなっていると指摘する冷ややかな意見も確かにある。しかし、トラックの完成度、パフォーマンスの素晴らしさがなかったら、再生数を増やすことには繋がらなかったのも確かなはずで、今回のクリスの創作の充実度がよくわかる内容となっている。

シャニースの“アイ・ラヴ・ユア・スマイル”使いのキーボード・リフがたまらなく90年代ノスタルジアを誘う“アンディサイデッド”、G・イージーやニッキー・ミナージュと共演する“ワブル・アップ”ではエッジを聴かせつつ、ドレイクと共演する“ノー・ガイダンス”では逆に甘いメロディを聴かせまくるなど先行シングル群も充実していたが、もちろん、アルバム全編が聴き応え満点の内容。モダンR&Bとしての切れ味を聴かせる楽曲、どこかノスタルジックな90年代テイストの楽曲、純粋なポップ・ソングやバラードなど、惜しみなくその力量が発揮されている。とにかくどのようにスタイルが変遷しても、必殺のキャッチーなボーカルが必ず曲のどこかに仕込まれてそれが効いてくるところがすごい。個人的にはアリーヤの“バック & フォース”へのアンサー・ソングとなった“スロー・イット・バック”のノスタルジーと新しさを同時に感じさせるセンスにしびれた。 (高見展)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』9月号に掲載中です。
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クリス・ブラウン インディゴ - 『rockin'on』2019年9月号『rockin'on』2019年9月号
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