愛と希望のヒップホップ

コモン『レット・ラヴ』
発売中
ALBUM
コモン レット・ラヴ

俳優としてのキャリアも相変わらず好調な一方で(『ジョン・ウィック:チャプター2』の強すぎボディガード役、マジ最高だったよね)、ここ数年は本業のラッパーとしても素晴らしい仕事を連発してくれているコモン。本作は、そんな彼にとって(ソロとしては)16年の『ブラック・アメリカ・アゲイン』以来、約3年ぶりの最新アルバムである。

「Let Love= 愛に身を任せよう」というタイトルからして、いかにもコモンらしさ炸裂なのだけど、実は本作は、今年5月に本国アメリカで出版されたコモンの回想録『Let Love Have the Last Word』の執筆作業に着想を得て制作された1枚で、さまざまな「ラブ=愛」の形をテーマに据えた、ちょっとしたコンセプト・アルバムに仕上がっている。ひと口で愛と言っても、コモンの場合、男女の恋愛とは限らない。たとえば“HER ラヴ”はヒップホップ・カルチャーへの変わらぬ愛情がテーマだし、 BJ・ザ・シカゴ・キッドらを迎えた“メモリーズ・オブ・ホーム”では家族との思い出が回想され、リオン・ブリッジズのコーラスが美しい“ゴッド・イズ・ラヴ”では神への信仰心が綴られていくーーコモンにとって、愛を語ることは、より良き世界への「希望」を語ることでもある。

プロデューサーは、昨年ロバート・グラスパーと共に結成した「オーガスト・グリーン」でも組んでいたカリーム・リギンズが中心となっている。もともとジャズ・ドラマーでありながら、ヒップホップにも精通した彼が繰り出すオーガニックなビートは、余計な自己主張に浸ることなく、コモンが必要とするスペースをちょうどいい密度で作り上げていく。気心知れた仲間と、やりたいことを、やりたいようにやっているときのコモンって、やっぱり最高に素敵だ。 (内瀬戸久司)



詳細はUNIVERSAL MUSIC JAPANの公式サイトよりご確認ください。

ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』9月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

コモン レット・ラヴ - 『rockin'on』2019年9月号『rockin'on』2019年9月号
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