成熟した純度

indigo la End『濡れゆく私小説』
発売中
ALBUM
indigo la End 濡れゆく私小説
新作『濡れゆく私小説』は、ディープな音像を追求した『Crying End Roll』『PULSATE』と比較すると、洗練されていてオープンな印象を与えるポップソングが多く揃う。ロックと80年代歌謡曲を掛け合わせた『幸せが溢れたら』の作風に近いが、今作はジャンルに照準を絞るというより、バンドの成せるポップネスを多方面に磨き上げた作品と言える。

ニューミュージックの様式美を追求した“花傘”や“心の実”、個々のプレイヤーの特性が活きるアンサンブルとダイナミックなサウンドメイクが光る“通り恋”や“砂に紛れて”、不穏でありながらユーモラスなギターフレーズと穏やかな音像のコントラストが小気味好い“秋雨の降り方がいじらしい”、主人公の心象風景をドラマチックに展開させる“小粋なバイバイ”など多彩な楽曲群でありながらも、溢れた感情が零れ落ちる瞬間や繊細な心の機微を封じ込めていることは共通。豊かで奥行きのある楽器の音色、なめらかな起伏で憂いを描くメロディの妙、叙情的な詞世界ときめ細やかな歌声――すべてが音楽への真摯で誠実な姿勢と想いの賜物だ。(沖さやこ)
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