“ひとりELO”が世界をハモらせるという魔法

ジェフ・リンズELO『フロム・アウト・オブ・ノーウェア』
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ALBUM
ジェフ・リンズELO フロム・アウト・オブ・ノーウェア

4年ぶりの新作。アーティスト名の表記のあり方からは、シンプルにELOと名乗れない大人の事情が垣間見えるが、実のところ、ごく一部の付加的な楽器以外はすべてジェフ・リン自身が演奏しており、歌やコーラスも含めてほぼ彼の自作自演。しかも制作現場は、彼の自宅スタジオ。ここまでくると、彼の名前の後に付いている所有格の“S”は実は“IS”の略で、彼とELOがイコールの関係であることを示しているのではないか、とさえ思えてくる。

日本では「ELOって今もあるの?」という人のほうが一般的には多いのだろうが、イギリス本国のみならず欧米における人気ぶりは今も絶大なもので、近年でも大規模なスタジアム公演やアリーナ・ツアーを成功させている。筆者は幸運にも昨年10月にロンドンのO2アリーナでの公演を目撃する機会に恵まれたが、老若男女で超満員の盛況ぶりには驚かされたし、ほぼELOの代表曲のオンパレードというショウ自体も、退屈とは完全に無縁のものだった。ときどき知らない曲が聴こえてきても、何故か長年にわたり親しんできたもののように感じられてしまうマジックに酔わされたものだ。

そして実は、このアルバムにも同じような魔法がかけられている。収録曲すべてが純然たる新曲であるはずなのに、聴き始めた途端に愛着が湧いてきて、二回目からはサビを口ずさみながら聴いている自分に気付かされるのだ。しかも普通に主旋律を歌うのではなくハーモニーを付けていたりする始末。何が言いたいのかといえば、とにかく70年代のELOそのままと言っていい楽曲がぎっしりと詰め込まれていて、『オーロラの救世主』(1976年)や『アウト・オブ・ザ・ブルー』(1977年)などと並べて聴いても遜色/違和感がなく、しかも陳腐なセルフ・パロディには陥っていないということ。そして「ビートルズとクラシックの融合」などと形容されてきたELOの音楽が、聴き手側の「ハモリたい欲求」を刺激せずにおかないものだということだ。そんな“ひとりELO”に花を添えているのが、近年もジェフと活動を共にしていて、ELOでの彼との付き合いが誰よりも長いリチャード・タンディ(ピアノ)だったりするのも、なかなか素敵だ。

世代的な理由などから、ビートルズ自体よりも、ビートルズの影響下にあるバンドに、より強い思い入れを抱いているという音楽ファンは少なくないはずだが(実は筆者もそんなひとりだ)、そうした人たちはもちろん、「ELOって何なの?」という世代にも薦めたい、親しみやすさ抜群の最新名盤である。 (増田勇一)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』12月号に掲載中です。
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ジェフ・リンズELO フロム・アウト・オブ・ノーウェア - 『rockin'on』2019年12月号『rockin'on』2019年12月号
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