極限の心、その先のポップ

グラス・アニマルズ『ドリームランド』
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ALBUM
グラス・アニマルズ ドリームランド

“ポーク・ソーダ”の歌詞にちなんでファンがライブ会場にパイナップルを持参→レディング&リーズ出演時にフェス運営サイドが「パイナップル持込禁止」を表明、というトピックでも注目を集めた前作『ハウ・トゥ・ビー・ア・ヒューマン・ビーイング』から4年。UKオックスフォード発サイケデリック・ポップ精鋭=グラス・アニマルズの3rdアルバムは、そのタイトルとは裏腹に、彼ら自身――特にフロントマン兼プロデューサーであるデイヴ・ベイリーにとっての内的な不安や葛藤との対峙、さらにその果ての覚醒が深く焼き込まれた作品となった。

前作ツアー中の2018年7月にジョー・シーワード(Dr)がバイク事故で重傷を負い、同年のツアー・スケジュールをすべてキャンセルする事態に見舞われた彼ら。そんな中でデイヴが選んだのは、瀕死の盟友の危機も含め「僕の人生の中で最も混乱した多くの瞬間」を、幼少期の記憶から現在に至るまで丹念に掘り起こし、ひとつひとつ楽曲へと形作っていくことだった。心の奥底に神秘の地平を繰り広げるような表題曲“Dreamland”のファンタジア。デンゼル・カリーのラップをフィーチャーした“Tokyo Drifting”の透徹した不条理感。“It's All So Incredibly Loud”で描き上げるハイパーな切迫感……。祝祭感とアンニュイさの絶妙のバランスを、ハイブリッドな音像越しに脳に直接伝達してくるようなクール&ダンサブルな前作とは趣を異にし、人間の根幹に渦巻くカオスに寄り添った結果、デイヴの歌声が備えていた妖艶さは、それこそ時代を超えたUKシーンの通奏低音とでも言うべき憂いの響きと共振するかのように切実に胸に迫ってくる。最終曲“Helium”の終盤、最初の“Dreamland”の主題がもう一度流れた時、確かに視界が澄み渡った。 (高橋智樹)



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グラス・アニマルズ『ドリームランド』のディスク・レビューは『ロッキング・オン』8月号に掲載中されました。
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グラス・アニマルズ ドリームランド - 『rockin'on』2020年8月号『rockin'on』2020年8月号
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