「紫の進化」の揺るぎない哲学

ディープ・パープル『ウーッシュ!【初回限定盤】』
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ALBUM
ディープ・パープル ウーッシュ!【初回限定盤】

2017年の前作『インフィニット』と足掛け3年に及ぶ「ザ・ロング・グッドバイ・ツアー」を経てリリースされる21作目のオリジナル・アルバムであり、「最後の幕引きぐらいはきっちりやってもいいかと考えている」というイアン・ギランのコメントから「ディープ・パープルの終章」とも噂される最新作。

重厚なミディアム~スロウ・テンポのビートを基調としながら、スティーヴ・モーズの鋭利なリフ・ワーク&ドン・エイリーの鮮烈なオルガンさばきでエンジン過熱必至のドライブ感を描き出していくここ最近のパープルの真価が、冒頭の“スロウ・マイ・ボーンズ”ではバンドのロック開拓史の証の如く堂々と鳴り渡っている。そして、“ドロップ・ザ・ウエポン”でのイアン・ギランの迫力のボーカリゼーション、“ハイウェイ・スター”にさらにリミッター超えの推進力をジャック・インしたかのような“ホワット・ザ・ホワット”の加速感は、平均年齢70歳超(一番若いモーズも66歳)という現ラインナップの世代感をも忘れさせるほどの音の剛性に裏打ちされたものだ。前々作『ナウ・ホワット?!』から3作続けてプロデュースを手掛けるボブ・エズリンとのパートナーシップも含め、ディープ・パープルの究極と呼ぶべき音像が実現されている。

さらに特筆すべきは、自身の1stアルバム『ハッシュ』のオープニングを飾っていたインスト楽曲“アンド・ジ・アドレス”の再録バージョンが収録されていることだ。その長い歴史ゆえに、リッチー・ブラックモア/ジョン・ロードというスター・プレイヤーの残像と長らく対峙せざるを得なかった彼らだが、すでにブラックモアよりも遥かに長く在籍するモーズの斬新なアプローチ、そしてロードへの敬意を滲ませつつ己のプレイアビリティを炸裂させるエイリーの各ソロ・パートは、結成から半世紀を超えてなお継承される「ディープ・パープルという名の進化の哲学」を確かに感じさせるものだ。

そのバンド・ヒストリーにおいてはメンバー同士の不和によってラインナップを幾度も変化させてきたし、その一触即発のスリルすらも音楽の原動力としてフィードバックしてきたディープ・パープル。しかし、今作のサウンドからは、メンバー個々のエゴや自尊心などは微塵も聴こえてこない。5人の研ぎ澄まされた音の刃は今、誰かを攻撃するためでも、互いを傷つけるためでもなく、ディープ・パープルの音楽をより深く強く時代とリスナーに刻み込むためのハード・ロックのダイナミックな聖槍として、揺るぎない存在感をもって今作に結晶している。 (高橋智樹)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』9月号に掲載中です。
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ディープ・パープル ウーッシュ!【初回限定盤】 - 『rockin'on』2020年9月号『rockin'on』2020年9月号
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