新型コロナウイルスの感染拡大によりライブもフェスも中止か延期となり、作品もリリースの延期が相次ぎ、さらにはこれから制作される音楽への影響も避けられない状況が生まれている。気が滅入るニュースに直面することも少なくない。ただ、気が滅入っているときに全く違う場所に連れて行ってくれる、少なくとも鳴っている間だけは頭の中をキレイな渦で洗い流してくれるのも、音楽が持つ力であることは間違いない。アニマル・コレクティヴが外出自粛期間を用い、この1年間で作っていた材料を自由にこねくり回して制作したこのEPは、その事実を改めて証明するに足るものになっている。
4曲入りではあれど、8分台、8分台、7分台、10分台と、合計するとフル・アルバム並みのボリュームを持つ本作。「平穏への架け橋」というタイトルが何より象徴的だが、このいつまで続くのかも分からない状況において、いつまででも麻痺していられる、サイケデリアの劇薬である。緻密かつ豪快に多様な形式を切り貼りし、混ぜ合わせる手法は基本的には従来通り。
ただし、近作、ポップに拘泥して自ら少しばかりの重荷を背負ってしまった『ペインティング・ウィズ』や、コンセプトに殉じたビジュアル・アルバム『タンジェリン・リーフ』に比べ、本作には明らかに快楽に到達するまでの「タメ」が無い。野心や悪意(もちろん、それらもまた彼らのチャームだったわけだが)に包まれる瞬間が無く、鳴っている音が絶えず気持ち良い。そのため、永遠に聴いていたくなる。ポップからアンビエントまで見事にバラバラな4曲だが、その一点により統一感がもたらされているのである。フリーキーで無軌道だからこそ痛快だったアニコレのキャリアに、本作はまた違った特別な意味を添えることになるだろう。 (長瀬昇)
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