時代の外にいる強み

DMA’S『ザ・グロウ』
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ALBUM
DMA’S ザ・グロウ

インディ・ロックが長らく不振にあるのは残念ながら事実だけれど、その先入観からアクセスすること自体を止めてしまうと、例えばこのDMA’Sのような例外的な成功を聴き逃してしまうことになる。「シドニー発、ギャラガー兄弟もお気に入りのマッドチェスター・リバイバル・バンド」という狭すぎるストライク・ゾーンに迷いなくド直球を投げ込んでいたデビュー当時のイメージも強烈だったが、早くも3枚目となる本作を聴けば、彼らが2010年代インディの負のナラティブから一切影響を受けず、「インディ・ロックの黄金期」という並行世界をひとりで謳歌している様に驚くはずだ。

DMA’Sは本作で自分たちの武器であるグッド・メロディにさらなる磨きをかけ、(並行世界の)熾烈な競争から一歩抜け出すことに成功している。そう、現実世界では90年代半ばのブリットポップがそういう競い合いだったように。太々しいワウ・ギターとリリカルなアルペジオの巧みな使い分けでグルーヴ・チューンからシンガロング・チューンまで幅広く展開、以前は「歌が上手いイアン・ブラウン」だったボーカルも巧みなコーラスワークによってハイファイなサイケ音響を獲得している。プロデューサーがスチュアート・プライス(キラーズ、PSB〔ペット・ショップ・ボーイズ〕他)なのも大正解で、『ゲット・レディー』期のニュー・オーダーを彷彿させる4つ打ちのダンス・ロックまで物にしているのだから凄い。このご時世に90年代以降のUKを中心としたインディ・ギターのあらゆるアプローチを履修(しかも全科目A)した末の本作の斜め上の成果は、シーンやトレンドに拘泥していると絶対に獲得できなかったものだろう。こうしてボタンを掛け違えたまま信じた道をひとり突き進んだ結果、本作は全英初登場4位なのだから痛快極まりないのです。 (粉川しの)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』9月号に掲載中です。
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DMA’S ザ・グロウ - 『rockin'on』2020年9月号『rockin'on』2020年9月号
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