今年2月に2作同時リリースされたEP『note-book -Me.-』『note-book -u.-』は、ディープな記憶と情念がちゃんみなの表現力を引き出すコンセプチュアルな力作だったが、それに伴うツアーは残念ながら中止となった。だからこそ今回の新作は、彼女が新たなフェーズの扉をこじ開けようとする意欲に満ち溢れている。収録された4曲のうち、表題曲“Angel”は先行配信されMVも届けられたのだけれど、情熱的なラテン調トラックに乗せて幸福な愛の時間を歌い上げるちゃんみなの姿はとても珍しいものだったと思う。しかし、それはこのシングルに横たわるストーリーの伏線にしか過ぎなかったのだ。ここでは“Angel”を起点に、ドロドロとした愛憎劇が繰り広げられることになる。プロデューサーにはお馴染みのRyosuke “Dr.R” SakaiやJIGG、そしてLA拠点の気鋭ジェイコブ・ガゴらが参加しており、とりわけJIGGのトラックが引き出す柔らかな、しかし取り返しのつかない諦観が滲む感情表現には背筋が凍る。初回盤のDVDに収録された、優れてシアトリカルなライブパフォーマンスにもぜひ注目してほしい。（小池宏和）

『ROCKIN'ON JAPAN』2020年10月号より