敬愛してやまない細野晴臣とのダブル・ヘッドライナーの企画もあったこの春の来日が中止になってしまったマック・デマルコから、彼らしいプレゼントが届けられた。
昨年、自らのレーベルMac's Recordから初リリースした4枚目のアルバム『Here Comes TheCowboy』のデモ集『Here Comes The Cowboy Demos』と、そのアルバム収録候補でもあった楽曲のデモをまとめた『Other Here Comes Tthe Cowboy Demos』の2種で、なんだか、ごちゃごちゃしてるが、要するに本編アルバムを楽しめた人には、それが何倍にも美味しくなるデザートというわけだ。
しかし、ジョナサン・リッチマン直系のまったりとした歌を紡ぐ人だけに、こうしたデモ集でも大きく印象が変わったりはしないし、以前から気軽にデモを披露しているので自身の中でもハードルが低いのだろう。どちらも聴き始めるとたちまちデマルコ・ワールドに引きずり込まれてしまうのはまったく一緒だが、素朴なギターのつま弾きやソフト・ロックのニュアンスを効果的に使った楽曲の記憶が匂い立ってくる『Here Comes The Cowboy Demos』は、やはり特別な感慨がある。本編でもチープなリズムが美しいメロディを引き立てる“Finally Alone”のような曲の原型を聴くと、いかに効果的に化粧を施されたかがよくわかるが、この調子で一曲ずつ確認する楽しみはこうしたシチュエーションならでは。
一方の『Other Here Comes The Cowboy Demos』もなかなか捨てがたい楽曲揃い、というかこれを自分のイマジネーションでアレンジしていく遊びの枠がたっぷりとある。歌詞がまだコンプリートではなくスキャットのスケッチ状態のもあるが、それはそれで聴けるのもこの人のキャラクターだろう。 (大鷹俊一)
『HERE COMES THE COWBOY DEMOS』の各視聴リンクはこちら。
ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』10月号に掲載中です。
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