モーターヘッドを知ったのは、今から39年くらい前に『ベストヒットUSA』の特番で、桑田佳祐が「最近のお気に入り」として紹介していたのを観た時が最初だった。それもあってか、第一印象から他のヘヴィ・メタル勢と違う本質を持っていることは直感的に分かった。元ホークウインドだとか、ダムドとレーベルが同じといったファクトは後になって知ったが、このバンドが原体験にあったおかげで自分はメタルとパンクの分断に巻き込まれ過ぎずに済んだのだと、あらためて感謝の念を抱いたりする。
そんなモーターヘッドが、レミー・キルミスター/フィルシー・“アニマル”・テイラー/エディ・クラークの黄金ラインナップで生み出した名盤として誉高い『エース・オブ・スペイズ』の40周年記念エディションが発売。オリジナルのテープからハーフ・スピードで新規に作成したマスターを使用しているそうだ。本作が最高傑作である理由のひとつとして、Dr.フィールグッドやトム・ロビンソン・バンドなども手がけたプロデューサー/エンジニアのヴィック・メイルによる貢献が大きかったことは、今作のライナーノーツなどでも語られており、その録音面でのアドバンスをあらためて実感しよう。
アナログ盤では2枚分となる81年のライブ・ボーナス音源も、彼らに相応しくラフながら迫力満点で聴き応え十分。レミー以外のメンバーも被ってきて喋るMCを含め、たっぷり楽しめる。さらに、豪華デラックス・ボックス・セットも同時リリースされ、そちらはデモや別テイクなど大量の未発表音源やレア・トラック、貴重映像、その他のオマケがどっさりと付属。アルバム本編の5.1chミックスは、2001年にシルヴァーラインというレーベルからリリースされたものと同じなのか現時点では不明だが、ぜひ聴いてみたいと思う。(鈴木喜之)
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