デトロイト愛、爆発

アリス・クーパー『デトロイト・ストーリーズ』
発売中
ALBUM
アリス・クーパー デトロイト・ストーリーズ

良いヤツだなぁー、アリス・クーパー。一度インタビューしたことがあるが、どんなことにも答えてくれ、しかもおいしいエピソードをぶち込んでくれるサービス精神には誰だってファンになる。そんな体験を思い起こさせる新作だ。

出身地であるデトロイトへのトリビュート・アルバムだが、まずオープナーが良い。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの名作“ロック&ロール”(『ローデッド』収録)で、オリジナル歌詞の《ニューヨーク》の部分を《デトロイト》と歌い変えニヤリとさせる。かつてデトロイト(ミッチ・ライダー&ザ・デトロイト・ホイールズの残党)が同曲をカバーしたバージョンを気に入ったルー・リードがプロデュースのボブ・エズリンを、あの『ベルリン』で起用したのだった。

本作も、アリス・クーパーとは『ビリオン・ダラー・ベイビーズ』などを生んできたボブのプロデュースで、さらにMC5のウェイン・クレイマー(G)、ミッチ・ライダー&ザ・デトロイト・ホイールズのジョニー“ビー”バダニェック(Dr)といった地元のレジェンド・プレイヤーたちやジャザノヴァのポール・ランドルフ(Vo)など多彩なゲストたちが参加して、それは華やかなお祭り状態を繰り広げてくれる。

これだけのメンツが本気で集まり、思いを集結していくのだから楽しくないわけはなく、“デトロイト・シティ2021”なんて曲も捧げられていて幸福感が無限に振りまかれていく。MC5やストゥージズを生み、モータウン・レコーズやPファンクなどでポピュラー・ミュージック界に多大な貢献を果たし、今だとジャック・ホワイトの夢を乗っけたサードマン・レコーズもここにある。そんな街の音楽史に思いを寄せたくなる好アルバムだ。(大鷹俊一)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』3月号に掲載中です。
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アリス・クーパー デトロイト・ストーリーズ - 『rockin'on』2021年3月号『rockin'on』2021年3月号
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