今鳴り響く必然性のある楽曲

Nulbarich『TOKYO』
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Nulbarich TOKYO
JQがNulbarich結成以前に書いた“TOKYO”。目的を持った人々が集まる都市で暮らしながら抱く葛藤を描いたという旨を本人が語っているが、渦巻いている音像と言葉の生々しさにドキリとさせられる。無数の選択肢と向き合っているうちに何も選べなくなったり、出会いに満ちつつも自分が何者でもないことを思い知らされたりもする場所である都会は、「賑やかなのに孤独を加速する」という矛盾を帯びている。このような街で暮らしながら抱く想いは、コロナ禍が続く中での生活のムードと地続きなのかもしれない。外出したり、誰かと会ったりする機会が抑制されつつも、ネットを駆使して様々なことを支障なく進められるのは有り難い。しかし、どういうわけなのか虚しさがゆっくりと募っていく……という感覚は、都市生活の孤独と似ている。“TOKYO”は、その両方を浮き彫りにしているように感じられる楽曲だ。寂しさ、迷い、不安と向き合いながら音を紡ぎ出している様が美しい。多くの人にとって現在進行形であるはずのモヤモヤした気持ちを温かい光へと静かに転じる力が、ここには確実に宿っている。(田中大)

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