裏切らないバンド

スノウ・パトロール『ハンドレッド・ミリオン・サンズ』
2009年04月22日発売
ALBUM
スノウ・パトロール ハンドレッド・ミリオン・サンズ
まっすぐに、真っ当に、自らのグッド・メロディを紡ぐ。それがスノウ・パトロールというバンドである。そうして前作『アイズ・オープン』は全世界で500万枚を超えるセールスを実現した。グラスゴーのいちインディ・バンドから一躍脚光を浴びた『ファイナル・ストロー』を経て、いまやUK・USでブレイクを果たした一大スタジアム・バンドになった。2年ぶりとなる新作も、基本的にはそのグッド・メロディを研ぎ澄ますようにして作られた一枚である。1stシングルの“テイク・バック・ザ・シティ”は軽快なギターを活かしたポップ・ロック・チューン。ピアノ・バラードの“無防備の愛”、ミドル・テンポの“イフ・ゼアズ・ア・ロケット・タイ・ミー・トゥ・イット”と、続くシングル曲も、エレクトロニカ風味と美メロが活きるドラマティックなナンバー。制作拠点のひとつは、U2『アクトン・ベイビー』やデヴィッド・ボウイ『ロウ』など数々の名作が生み出されたベルリンのハンサ・スタジオ。16分を超える大作のラスト・トラック“ザ・ライトニング・ストライク”では実験的な側面を垣間見せるが、アルバム全体のテイストとしては、堂々と叙情派ロックの王道を歩むような1枚になっている。

破綻のないクオリティと抜群の安定感を持つアルバムである。人によっては刺激がないと感じるリスナーもいるかもしれない。けれど、彼らのように愚直にメロディの持つ力を追い求め、そのスケールを広げていくタイプのバンドは実は貴重だとも思う。前回の来日はキャンセルされてしまったが、今度こそ来て欲しい。(柴那典)
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