コロナを乗り越えて目指すべきはコパカバーナの境地

ザ・ローリング・ストーンズ『ア・ビガー・バン:ライヴ・オン・コパカバーナ・ビーチ (ブルーレイ・デラックス・ヴァージョン)』
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ALBUM
ザ・ローリング・ストーンズ ア・ビガー・バン:ライヴ・オン・コパカバーナ・ビーチ (ブルーレイ・デラックス・ヴァージョン)

敢行中だったノー・フィルター・ツアーがコロナ禍で頓挫したままとなっているザ・ローリング・ストーンズだが、06年のア・ビガー・バン・ツアー時にブラジルはリオデジャネイロのコパカバーナ海岸で行われたフリー・ライブの完全盤がリリースされる。もちろん、画質、音質いずれもリマスタリングとリストアを行ったもので、さらに07年にリリースされた時(『ザ・ビッゲスト・バン』)には収録されなかった曲もすべて揃えた内容となっている。

06年になぜこの4曲が収録されなかったのかは不明だが、この頃はまだ映像ソフトの規格がDVDだったため、ディスク1枚には入りきらなかったということなのかもしれない。

では、今なぜこのコパカバーナ・ライブなのかというと、これがまさに、今とは真逆のリアルを伝える映像で、150万人ともいわれる大観衆を海岸に集めての歴史的な無料コンサートだったからだ。この圧倒的なまでに密な映像を観るだけでも、今ぼくたちがどういう状況を生きているのかということをあらためて実感させてくれるという意味で、やはりストーンズはベテランになってもなお、時代の皮膚感覚を最前線で伝えてくれるアーティストなのだと断言できるのだ。

その底力のほどは、暗すぎるからとボツ曲になっていた“リヴィング・イン・ア・ゴースト・タウン”を昨年、緊急リリースしたことからも明らかだろう。

また、ストーンズの場合、これまでにもロック史に残る無料コンサートを敢行していて、69年のハイド・パークにしても、オルタモントにしても、ロックと時代を考える上では避けては通れないライブとなっている。しかし、バンドはまだ新体制に入って間もなく、演奏面ではいずれも硬さが気になるのだが、その点、このコパカバーナの時点でのストーンズは、百戦錬磨では済まされない経験と凄味をみせつけるものになっていて、そこが最大の見所だ。

さらにストーンズの無料ライブとなると、近年では16年にキューバのハバナで行われたものがとかく引き合いに出されるので、今一度コパカバーナの歴史的重要性を確認したかったという意味合いもあってのことかもしれない。

同時収録では同じツアーからソルトレイクシティのライブもあり、こちらはセットリストがかなり違っていて、そこが心憎いファン・サービスとなっている。

必見なのは、コパカバーナ無料ライブ実現までのドキュメンタリー。ストーンズのドキュメンタリーはバンドが製作に絡んだものは文句なしにどれも面白いし、これもその例に洩れないが、とにかくこの徹底した現場ルポが癖になる。たとえば、このコパカバーナの会場は海岸を使用しているため、すさまじく縦方向に長くなる。会場には10本以上のスピーカーとビジョンのタワーが設立されるが、ステージからの音が届くのに距離に応じて時間差が生じる。その時間差を正確に計算してタワーに音をズラすなどの調整を施す現場の姿など、めちゃ面白い! ドキュメンタリーから先に観るのがお勧めだ。(高見展)



ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』8月号に掲載中です。
ご購入は、お近くの書店または以下のリンク先より。

ザ・ローリング・ストーンズ ア・ビガー・バン:ライヴ・オン・コパカバーナ・ビーチ (ブルーレイ・デラックス・ヴァージョン) - 『rockin'on』2021年8月号『rockin'on』2021年8月号

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