『沿志奏逢』は初期から掲げられているアルバムタイトルだけれど、今こそ響かせたいメッセージだと、今作を聴いて思った。この言葉から私が思い描くイメージは、人と人とがぶつかって、交わっていくところにしかない感動や、人と音楽との偶然の出会いや、時を経てもつながり続けることへの尊さといった、コロナ禍で置き去りにされがちなもの。そう考えると、2021年に、全オリジナル楽曲と代表的カバーソングを収録したDISC1、「ap bank fes」の歴史的名場面をセレクトした「LIVE BEST」のDISC2という、全25曲からなる今作がリリースされるのは、必然なのだと思う。

MISIAを迎えた「究極の邦楽」“forgive”、東京を代表するボーカリストの宮本浩次と櫻井和寿による“東京協奏曲”に留まらず、過去楽曲すべても生々しく響くDISC1。syrup16g“Reborn”など、ミュージックラバーの琴線を震わせる名曲、そしてASKAや小田和正との共演、さらにオーディエンスの歓声や歌声が収められたDISC2。全曲リマスタリングされて、壮大なひとつの作品として仕上げられている。（高橋美穂）

『ROCKIN'ON JAPAN』11月号より