待望の1stフルアルバム。アンセム感のある“Millennium Hero”やストリングスも入った“夏の奇跡”など、バンドの音楽的進化が序盤から刺激的だ。リュックと添い寝ごはんがコーラスで参加した穏やかな“さよならのメロディ”もいい。そして、やはりこのバンドの詩情には世界の裏表をひっくり返すような特別な力がある。《もう来ない日々は もう来ないわけじゃない》(“さくら”)、《生きててよかった この時代でよかった》(“めぐり”)――「嘘か本当か」の二元論を超えて、「今、歌われなければならなかった」と思える素朴な祈りのような言葉たちが、音楽の中で生き生きと走り出し、踊り出す。
ヒーローは、何食わぬ顔をして私やあなたの隣に佇んでいる。それをこのアルバムは証明している。(天野史彬)