2021年上半期に連続リリースされたデジタルシングル群は、いずれも非バンド的な作風によって我々の生きる特殊な季節を映し出していた。
そして今回のニューシングルは、タイトなバンドサウンドから始まる。まず“飛行する君と僕のために”は、5年前の全国ツアー「魔法的~」からライブ披露されていた楽曲が待望の音源化。不安感を抱きながらも颯爽と離陸するクールなファンキーポップが、《飛行する君と僕のためにある 科学と文学/方角をくれる》という思いを乗せ、新たな旅立ちに鳴り響く人類讃歌だ。この時期に晴れてリリースされる点も含めてグッとくる。そしてさらに素晴らしいのが、書き下ろしの新曲“運命、というかUFOに(ドゥイ、ドゥイ)”。何気ない日常の風景を切り取り、そこに奇跡的な幸福と高揚感を見出す小沢マジックの一撃だ。どこか90年代のオザケンと地続きになった軽やかな響きが、逆に新鮮な手応えをもたらしてくれる。我々はたぶん、その《無敵》の瞬間を知っていた。もちろん、念願の『犬キャラ』限定再発と併せて手に取ってほしい。(小池宏和)
いざ、終わらない左カーブの先へ
小沢健二『飛行する君と僕のために / 運命、というかUFOに(ドゥイ、ドゥイ)』
発売中
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SINGLE